2020年東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場(東京・新宿)について、国が整備費を計2500億円程度で検討していることが5日、関係者の話で分かった。これまでの計画では約1625億円と試算していた。金額が大幅に膨らんだことで、財源の確保や東京都の負担分の調整がさらに難航しそうだ。
新国立競技場のイメージ=日本スポーツ振興センター提供
関係者によると、文部科学省と、競技場の運営主体、日本スポーツ振興センター(JSC)は昨年以降、施工予定のゼネコン2社と工費や工期について協議。昨年末の時点で、設計通りでは19年9月開幕予定のラグビー・ワールドカップ(W杯)に間に合わず、コストも大幅に膨らむと説明を受けた。
文科省とJSCは、今年3月に設計の大幅見直しに着手。開閉式屋根の設置を五輪後に先送りにし、約8万席としていた座席のうち約1万5千席を仮設とする案を提示し、整備費を2500億円程度とすることでゼネコン側と交渉しているという。
ネックとなっているのはアーチ状の巨大な屋根。国内の施設では例がなく、整備費が膨らむ一因になっているという。
新国立競技場の整備について、国は当初、1300億円と試算。その後、再計算したところ3000億円まで膨らむことが判明したため、総面積を縮小するなどして、1625億円まで圧縮した経緯がある。
整備費を巡っては、下村博文・文科相が5月18日、舛添要一都知事に一部負担を要請したが、舛添知事は「税金を払うのは都民。説明を受けたうえで検討したい」と判断を留保した。
その後、都の負担分を約580億円とする文科省の試算が明らかになると、知事は「支離滅裂。都に一言の相談もない」と批判。文科省幹部の都幹部への説明も断るよう指示し、負担を巡る議論は宙に浮いている。
下村文科相は5日の閣議後の記者会見で、JSCから整備費などの検討状況について同日説明を受けることを明らかにし、「金額など途中経過を言う段階ではない。見通しがついてから詳細を報告したい」と話した。
都幹部は整備費について「一切聞いていない」としており、都の負担について「国側の正式な説明を待ちたい」との立場を示している。