【ブリュッセル=小滝麻理子】英国のキャメロン首相は25日夜、欧州連合(EU)首脳会議の晩さん会で、各国政府の権限強化などを柱としたEU改革案を示した。ただ、改革に必要なEUの基本条約の改定は「かなり難しく、時間がかかる」(欧州議会のシュルツ議長)と否定的な意見が多い。支援問題に揺れるギリシャに続き、「EU離脱論」で揺れる英国に欧州はさいなまれている。
5月の総選挙で勝利したキャメロン氏は、移民急増や加盟国への規制強化などに対する国内の不満を受け、EUのあり方を改革した上で2017年末までにEU離脱の是非を問う国民投票を行うことを公約している。今回は改革の方向性や英国内の不満の背景などについてEU首脳らにまとめて説明する初の機会。キャメロン氏は「改革に向けたマイルストーンだ」と意気込んでいた。
関係者によると、キャメロン氏は、急増する移民の受け入れや社会福祉資格を制限できるようにするほか、各国議会に規制などの権限を取り戻すことや、欧州議会の組織の透明性向上などを訴えたもよう。だが、移民制限はEU内の移動の自由をうたう基本条約の中核の理念で、条約改定には全加盟国の承認が必要になり、ハードルは高い。
足元でギリシャ支援や地中海の難民問題が切迫するなかで、各国首脳に英国の離脱問題にかまう余裕も乏しかった。26日の首脳会議の共同声明では、英国が求めるEU改革については「12月にまた話し合う」と書くにとどめる方向。国内世論に押されてEU改革を焦るキャメロン氏と、欧州首脳陣の温度差も浮き彫りになった。