コケ植物の観賞を楽しむ女性が増えている。山や渓流での観察会が人気を集め、「コケガール」という言葉も生まれている。「かわいい」「癒やされる」。長野県の北八ケ岳の森で開かれた1泊2日の観察会でも、ルーペの先に現れる愛らしい姿やたくましい生命力に女性が心を躍らせた。
日本蘚苔(せんたい)類学会から「日本の貴重なコケの森」に選ばれた北八ケ岳・白駒池周辺の群生地。6月13日、高見石小屋に17人が集まった。14人は女性。ジャンパーがカラフルだ。
植物生態学が専門の都留文科大非常勤講師、上野健さん(44)の解説で、ルーペを片手に登山道を進む。観察のポイントは「コケと目線を同じにすること」。時には地面に頬をこすりつけ、はいつくばる。
石の上のコバノスナゴケに霧吹きすると、つぼみのようだった葉が開き、茶色から鮮やかな緑色に変化した。「魔法みたい」と歓声が響く。
上野さんは「女性は葉の形や色の変化を素直に楽しむことができ、コケ観察に向いているのでは」。参加した茨城県五霞町の会社員、杉山麻里さん(27)は「水と光を求めてたくましく生きているのがいい。コケ同士が共生する姿を見て日々の競争社会も忘れられる」。
山小屋関係者らで運営する「北八ケ岳苔の会」が2011年に始めた観察会は年5回の開催だったが、すぐ定員が埋まるため14年は年8回に。参加者の大半は女性だ。
こうしたイベントは他の地方にも。青森県にある星野リゾート奥入瀬渓流ホテルは観察ツアーが付いたプラン「苔ガールステイ」を13年に始めた。「コケはともだち」という著書がある藤井久子さん(37)は人気の背景を「ここ10年、女性登山者が増えた。女性は草花をめでて歩く人も多く、その延長で興味が湧いたのでは」と分析する。〔共同〕