大量発生して人に嫌われがちな外来種のヤスデが、心臓病の治療薬や農薬を合成するのに必要な酵素を体内に持っていることを富山県立大のチームが見つけ、米科学アカデミー紀要電子版に発表した。
このヤスデは台湾から植物に付いて九州や沖縄に上陸し、本州にも生息域を広げる「ヤンバルトサカヤスデ」。体長約3センチで足は約100本、敵から身を守る際に青酸ガスを放出する。チームは青酸をつくる酵素が体内にあると考え、研究を始めた。
大量発生した九州地方の杉林を訪れ、ほうきで約12万匹、重さ30キログラム分のヤスデを集め、すりつぶした。この液体から有用な酵素「ヒドロキシニトリルリアーゼ」を抽出、ヤスデ1キログラムから0.12ミリグラムが得られた。
この酵素は現在、アーモンドから抽出されたものが工業的に利用され、抗炎症剤や農薬の合成に使われている。ヤスデの酵素はアーモンドより5倍以上高い効果があり、高温でも壊れにくく実用に適しているという。
富山県立大の浅野泰久教授(酵素化学工学)は「嫌われているため、すぐ近くにいても誰も調べなかった。コロンブスの卵ではないが(発想を転換し調べてみたら)有用だった」と話している。〔共同〕