九州経済連合会の主導でアジアの中所得層に向けた九州の1次産品の輸出計画が動き出す。船便の活用などで店頭価格を国内の2倍以下に抑制。従来は富裕層に限られていた市場の裾野を拡大する。アジア各地に店舗網を持つ香港の小売り大手と連携し、11月には現地スーパーで販売を開始。生産者と経済界がタッグを組む「オール九州」体制で、九州ブランドのアジア浸透を加速する。
8日、九経連の麻生泰会長らが記者会見し、輸出体制を正式発表した。九経連主導で発足し、輸出を統括する九州農水産物直販(福岡市)が同日、香港の小売り大手デイリー・ファームと取引基本契約を結んだ。麻生会長は「環太平洋経済連携協定(TPP)で(輸出の)門戸が開くチャンスに(産品を)出していくのが重要だ」と強調した。
青果卸の福岡大同青果(福岡市)を通じて、九州産を中心に農産物を調達。同社が日本郵船グループなどと開発した鮮度保持技術を活用し、船便で輸出する。輸送コストは航空便の10分の1程度に抑えられるという。さらに現地の青果卸など既存の物流を通さないことで、現在主流の航空便では国内の3倍以上になっていた店頭価格を2倍程度までにとどめる。
10月後半に輸出し、11月初めごろには香港にあるデイリー社のスーパーに設けた九州産品コーナーに並べる。3店舗で開始し、半年以内に20店舗に拡大。販売品目はキュウリ、シイタケ、トマト、サツマイモなど20品目程度を想定する。水産物や畜産物、加工品の取り扱いも早期に始める。シンガポールなどアジア各地への展開も検討する。
「香港では安全で良質な日本の農産物の人気が高い」(デイリー社のローレント・ピアッツァ食品担当役員)ため、中所得層の需要の開拓余地は大きいと見込む。販売額は農産物だけで年度内に1億円、2016年度に4億3千万円を目指す。
デイリー社は香港に本社を置く英系複合企業ジャーディン・マセソン・ホールディングスの傘下で、13年の売上高は約1兆5千億円。香港や台湾、シンガポールなどアジア各地で約5800店の小売・飲食店を運営。このうちスーパーは約1200店で、香港だけでも約300店を持つ。
九州農水産物直販は九経連の麻生会長が率いる麻生グループの中核企業である麻生(福岡県飯塚市)が8月末に設立。JA宮崎経済連、九州旅客鉄道(JR九州)、九電工、西部ガス子会社のエスジーグリーンハウス(北九州市)などが出資しており、JA宮崎経済連の羽田正治相談役が社長を務める。今後、宮崎以外の他県のJAなどからも出資を募り、オール九州体制を固める。