【ジュネーブ=原克彦】18日に投開票したスイスの総選挙は、第1党で反移民を掲げる右派の国民党が下院の議席数を2割伸ばし、勢力を大幅に拡大した。中東などからの難民が欧州へと押し寄せるなか、国民の不安が選挙結果に反映された。経済が底堅いスイスで右派が支持を広げたことは、欧州の他国でも反移民派が勢いづくきっかけになる可能性もある。
4年に1度の総選挙は定数200議席の下院と46議席の上院を同時に行う。下院では国民党が65議席と前回より11議席増やした。連立政権に加わる五大政党では中道左派で2位の社会民主党が43議席と3議席減った一方、3位の中道右派・自由民主党は3議席増の33議席になった。上院は一部議席の確定を11月の再選挙に持ち越した。
野党では左派の「緑の党」と中道派の「新・緑の党」が議席を大幅に減らした。新・緑は11年の前回選挙で東京電力・福島第1原子力発電所の事故を受けて脱原発を掲げて躍進したが、今回は関心が薄れたとみられる。
内閣は12月、上下院の合同会議で決める。主要政党が7人の閣僚ポストを分け合う大連立政権の枠組みは維持する見通しで、政策が急に変わることはないとみられている。ただ、第1党なのに1人しか閣僚がいない国民党は、社会民主党などと同等になる2人目のポストを求める意向だ。
反移民政党の勢力拡大の背景には、既に独英仏などからの外国人が人口の約25%を占めることへの不満もある。人口比で見ると、難民の受け入れも欧州ではスウェーデンとマルタに次いで多い。2014年2月の国民投票では移民の受け入れに上限を設ける提案を僅差の賛成多数で可決した。
スイスの選挙結果は欧州の右傾化を象徴しているとの指摘もある。25日に総選挙を実施するポーランドでも、世論調査では移民・難民にもっとも厳しい姿勢をとる野党の右派政党が優勢だ。他国での右派の勢いを、英国の英国独立党(UKIP)やフランスの国民戦線(FN)といったポピュリズム(大衆迎合主義)政党がキャンペーンに利用する可能性もある。