【ワシントン=川合智之】オバマ米大統領は6日、カナダから米テキサス州に原油を運ぶ「キーストーンXLパイプライン」の建設申請を却下すると発表した。カナダのエネルギー企業トランスカナダが2008年に申請したが、オバマ政権は建設を認めると石油消費が増え気候変動に悪影響があると判断した。
オバマ氏は6日午前、バイデン副大統領、ケリー国務長官とともにホワイトハウスで緊急声明を発表し、「米国は気候変動との戦いで重要な行動をとる世界のリーダーだが、この計画を認可すると指導力を損なう」と強調した。
野党・共和党は経済成長に不可欠だとして建設を推進していたが、オバマ氏は認可しても(1)ガソリン価格は下がらない(2)エネルギー安全保障を強化しない(3)経済貢献にはつながらない――などと共和の主張に否定的な見解を示した。
建設推進を公約に掲げて当選したカナダのトルドー新首相にも不認可の方針を伝えたという。今回の決定が両国関係の妨げにならないことを確認したとしている。
認可の是非は16年米大統領選でも政治的争点となっており、トランスカナダは大統領選後に審査を先送りするよう申し入れていた。一方、オバマ氏は11月末に開幕する第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)の前に判断を下すことで、地球温暖化対策に注力する姿勢を強調した形だ。
パイプラインは米国内消費量の約1割にあたるカナダ産原油をメキシコ湾の製油所に運ぶ計画。建設費は80億ドル(約9900億円)。08年の申請以来、審査は大幅に延び、棚ざらしとなっていた。