作家の村上春樹さんが29日、福島県郡山市で開かれた文学イベントにゲストとして登場した。村上さんは創作について、好物のカキフライを一人で揚げて食べることに例え「本当に孤独な作業だが、誰に頼まれて書いているわけでもなく、苦情の持っていきようがない。『一人カキフライ』に似ている」とユーモアを交え語った。
村上さんが国内の公の場で話すのは珍しく、聴衆にも直前まで伏せられたサプライズだった。
イベントは作家の古川日出男さんらが主催した「ただようまなびや 文学の学校」。「想像力はどう学べるか?」と題した討論会に登壇した村上さんは執筆時の孤独感に触れ「(小説執筆ではなく)台所でカキフライを揚げているんだと考えると、肩の力がすっと抜けるんです」と笑いを誘った。
登壇前には地元の高校を訪ね、高校生と語り合った。「高校生が一番今、共通して困っているのは自分をどう表現していいか分からないということだった。何も表現できないなら、引き出しにどんどん入れておけばいい。表現できないことを恐れてはいけない」と助言したことを報告した。〔共同〕