【ワシントン=河浪武史】国際通貨基金(IMF)は30日の理事会で、特別引き出し権(SDR)と呼ぶ準備通貨に中国・人民元を採用することを正式決定した。ドルや円などに次ぐ5通貨目で、現制度になって約35年間で構成通貨の追加は初めて。元はドルや円と並ぶ国際通貨として「お墨付き」を得たことになる。貿易・投資で元の利用に弾みがつくが、中国当局にはもう一段の取引自由化が求められる。 SDRはIMFが188加盟国に配る「準備通貨」で、通貨危機などに陥った国がSDRをほかの加盟国に渡すと、ドルやユーロ、英ポンド、円の主要4通貨と交換できる。今年は5年に1回の構成通貨の見直し年だった。通貨ユーロの発足で構成を見直した2001年を除けば、SDRに新たな通貨が加わるのは、1981年の現制度発足後で初めてだ。人民元の採用は来年10月になる。 SDRの採用には「貿易量」と「通貨取引の自由度」の2つの条件を満たす必要がある。中国はユーロ圏に次ぐ貿易量を誇るうえに、厳しく制限してきた人民元の国際取引も、欧州やアジアでも元建て商品に投資できるよう自由化を徐々に進めてきた。IMFのラガルド専務理事は理事会後の記者会見で「中国当局は数年にわたって通貨・金融制度を改革してきた」と前向きに評価した。 SDRの価値はドルや円など構成通貨を組み合わせて決める「通貨バスケット方式」だ。30日には新たなバスケットの構成比も公表し、ドル(41.73%)、ユーロ(30.93%)、人民元(10.92%)、円(8.33%)、ポンド(8.07%)とした。構成比は市場や外貨準備での使用割合をもとに算出し、各通貨の国際的な重要度を示す。人民元は円を上回って3位に入った。 SDRは個人や企業が使うことはできないが、中央銀行や政府が外貨準備の一部として保有している。IMF加盟各国はSDRとの交換に備えて構成通貨を積み増す傾向があり、人民元の採用によって世界の外貨準備に占める元の割合が、現在の約1%から約1割に増えるとの見方もある。 ただ中国がもっとも期待するのは人民元が国際通貨の仲間入りしたというIMFによる「お墨付き」の効果だ。中国は過度なドル依存からの脱却を目指し、人民元を各国との貿易や投資に使う通貨の国際化戦略を推し進めており、元の信用力の向上が必要だった。 人民元が国際通貨として使われるようになれば、中国企業は輸出入をドルなど外貨建てから人民元建てに移すことができ、為替変動のリスクや為替ヘッジのコストを避けることができる。習近平政権が進めるアジアやアフリカ、中南米でのインフラ投資をさらに後押しできるとの思惑もある。 もっとも人民元取引の自由化は始まったばかりで不完全だ。国境をまたぐ取引には制限が残り、ドルや円のように個人や企業が国際的に幅広く使える状態にはない。IMFは人民元を国際通貨体制に取り込むことで、より柔軟な変動為替相場制への移行を促す考えで「制度改革が進むか今後も監視していく」(ラガルド氏)と強調している。 |
人民元のSDR入り、IMFが決定 円上回る比重で
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