妖怪漫画の巨匠、水木しげるさんの訃報に、各界の関係者から惜しむ声が相次いだ。
「僕が漫画家になれたのは水木先生のおかげ」と話すのは「釣りキチ三平」の作者で漫画家の矢口高雄さん(76)。1969年、出版社に原稿を持ち込もうと秋田県から上京。編集者の反応から諦めていた時に「大丈夫だよ」と励まされたという。「人間を冷静に見ていたがその半面、優しさにあふれるところもあった」と別れを惜しんだ。
哲学者の梅原猛さん(90)は2010年に水木さんと対談。「一度きりの出会いだったが、友情を感じた」。神話や妖怪の話などで盛り上がったという。「総員玉砕せよ!」など一連の戦記物は「大岡昇平の『野火』に続く名作。現代を代表する芸術家の一人だった」と評価した。
妖怪文化に詳しく水木さんとの親交も深かった作家の京極夏彦さんは「唯一無二の偉大な指標を失い、言葉もありません」とのコメントを発表。師と仰ぎ、刊行中の水木さんの漫画大全集の監修も担当。「大先生の遺志を継ぎ、弟子筋一同『妖怪』推進に励むことを誓うとしか、今は申しあげられません」と悼んだ。〔共同〕