ノルウェー・オスロで10日開かれるノーベル平和賞授賞式に、広島と長崎からそれぞれ被爆者の代表が出席する。日本原水爆被害者団体協議会(被団協)によると、被爆者の参加は初めて。ノーベル賞委員会が来賓として招待した。2人は8日、現地へ向けて出発。式典で演説やあいさつの機会はないが、各国からの出席者らとの交流を通じ「核兵器の惨禍を世界に訴えたい」と意気込む。
「原爆はあまりにも残酷。そのことを世界に分かってもらいたい」。授賞式に出席する築城昭平さん(88)=長崎市=は18歳で被爆。戦争と被爆の記憶が風化していくことを懸念し、1970年代から、長崎を訪れる修学旅行生のための「語り部」を始めた。米国やフランス、旧ソ連時代に核実験場があったカザフスタンなどを回り、被爆体験と核兵器の脅威を伝えてきた。
今回の授賞式出席では、長時間の移動に加えて式典の翌日にオスロ市幹部らとの面会なども予定されており、高齢の身には厳しい日程だ。それでも「将来世代のため、体力の続く限り、核廃絶を訴えたい」と笑顔で日本を旅立った。
広島市から授賞式に出席するのは、岡田恵美子さん(78)。原爆で姉を亡くし、自身も放射線の影響で激しい貧血症状に苦しんだ。岡田さんは「将来、私たちの子供や孫たちが再び戦争に巻き込まれないよう、きのこ雲の下で何があったのかをきちんと伝えたい」と話す。〔共同〕