【北京=永井央紀】北京市では最も深刻な大気汚染警報「赤色警報」が発令されており、9日も一面の白いスモッグに包まれた。交通規制や工場の操業規制でも改善はみられず、中国の英字紙チャイナデイリーは3億人に影響が及ぶと報じた。一部企業は在宅勤務に切り替えるなどの対策を講じた。10日昼には風が強まるとの予報で、空気中の汚染物質が拡散されるとみられているが、赤色警報はそれまでは続く見通しだ。
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マスクをする女性(9日、北京)=AP
北京市の大気汚染に関する警報は4段階で、最高レベルの赤色警報は7日夜に初めて発令された。北京の米大使館のウェブサイトによると、同大使館が公表する大気中の粒子状物質「PM2.5」による汚染指数は9日午後6時(日本時間同7時)現在で351と、最悪レベルである「厳重汚染」に達している。
影響は北京市内にとどまらず、周辺の河北省や天津、河南省、山東省などに広がっている。
北京市政府は8日から一般車両のナンバープレートの末尾数字が偶数か奇数かで通行できる日を規制し、交通量を半分に減らした。建設工事は中止としたほか、市内で2100以上の企業が8日までに生産停止や減産の措置を講じた。
北京市内の小中学校は8~10日まで臨時休校となった。だが、この判断のもとになった赤色警報は7日に突然、発令された。中国に多い共働き家庭では、子供の世話をする人の確保に追われた。
東芝は従業員の家庭状況を踏まえ、8~10日の3日間は従業員に通常より1時間遅い出勤や1時間早い退勤を認める措置をとった。日立製作所の北京の現地法人は、一部の社員について在宅勤務に切り替えた。中国の人気雑誌『人物』は出版工場が操業停止になったとして12月特別号の発行延期をインターネットで発表した。
北京では12月初め、今回よりも一段と深刻な大気汚染に襲われた。その際に赤色警報を出さなかったことに批判が噴出していたため、今回の唐突な発令に至ったとの見方が多い。