経団連の榊原定征会長(72)は日本経済新聞などとの新春インタビューで、2017年4月の消費税率10%への引き上げを控え、名目3%の経済成長を「是が非でも達成しなければいけない」と述べた。経済界と政権との連携は欠かせないと強調。賃上げや設備投資を積極的に促していく考えも示した。
榊原定征・経団連会長
――今年の日本経済の見通しをどう見るか。
「15年のキーワードは干支(えと)の羊にちなんで『翔』とした。日本経済がとび立つ年にと願いを込めたが、羊に羽がはえてもあまり高くは飛べなかった。16年は『実』。重要課題を着実に実行し、経済再生を確実に実現する年にしたい」
――16年秋までに政府は消費税率10%上げを最終判断する見通しだ。
「消費増税も絶対に実行しなければいけない。安倍晋三首相もその考えだと思う。8%に引き上げた時、駆け込み需要と反動減という苦い経験をした。住宅、自動車、家電などでありとあらゆる消費喚起が必要で、万全の準備が欠かせない」
「増税を乗り越えられる経済の地力をつける必要がある。政府は実質1.7%、名目3.1%という成長率目標を掲げる。高い低いの論評でなく、是が非でも達成しなければいけない。十分に達成可能だ。懸念が強い中国経済も6.5%以上の安定成長を維持するはずで、大きなリスク要因になると思っていない」
――安倍政権3年間の評価は。
「民主党政権での経験をよく思い出してほしい。当時、日本経済は停滞し、自信も将来への見通しもない世界だった。安倍政権3年で株価は2万円近くまで上昇し、雇用も改善した。環太平洋経済連携協定(TPP)も大筋合意に導いた。14兆円の経済効果が見込まれるTPPは日本にとって究極の成長戦略だ」
――政権と「近すぎる」との指摘もある。
「極めて不本意だ。国内総生産(GDP)が1円も増えない時代が20年続き、墜落しようとする飛行機(のような日本経済)を安倍機長が立て直そうとしている。それを批評している場合か。政府から賃上げや設備投資の要請があった場合、無責任にできない、できるはずないと伝えることが、本当に国のためになるのか。榊原は首相に文句を言ったと褒めるのか。今は平時ではなく戦時だ。当然、政治と経済が一緒になって危機から立ち直る時期だ」
――春季労使交渉の行方は。
「15年はベースアップを意識した交渉の指針に仕立てたが、今年の指針はあえてしていない。過去2年、悠々とベアができた企業とそうでない企業がある。あくまでベアや定期昇給、賞与、各種手当を含めた年収ベースで、15年を上回る賃上げを期待したい」