日本各地の山で増加し、農作物などへの食害が深刻な問題になっているニホンジカを効率的に捕獲するため、公開されている植物の種類や地形などのデータから生息数を予測する技術を、富士通研究所(川崎市)が18日までに開発した。
これまでは目撃数やふんの密度など、現地調査で得たデータから捕獲する場所を選んできたが、調査できる場所が限られ、費用がかかることが難点だった。予測により、調査を優先する場所を選ぶことができ、効率的な対策につながるという。
植生や地形情報からシカの生息可能地域を抽出。1頭が生息するのに必要な面積を5.7万平方メートルと見積もり、1平方キロ当たりの生息可能数を予測した。
山梨県甲州市でこの手法を使った予測と、現場の調査データを比べると、ほぼ予測が信頼できることが確認できた。ただ予測と合わない場所もあり、山梨県森林総合研究所の協力を得て、細かい植物の種類や積雪などの季節変化も予測条件に加え、今年9月までプログラムの改良を進める。
高齢化でハンターが減ったことや、地球温暖化で積雪量が減り、子ジカが冬を越すのが容易になったなどの理由で近年、ニホンジカは全国で急増。環境省は捕獲促進などの対策に乗り出しており、富士通研究所の尾崎光男専任研究員は「予測精度を高め、各地のニホンジカ対策に役立てたい」と話している。〔共同〕