【アムステルダム=共同】欧州連合(EU)の欧州警察機関(ユーロポール、本部オランダ・ハーグ)に「欧州テロ対策センター」が設けられ、ユーロポールのウェインライト長官らが25日、アムステルダムで本格始動を宣言した。
センターは、昨年1月にフランスで起きた連続テロ後、欧州委員会が加盟国の情報共有や実務協力を広げるための核として設置を決めた。欧州からシリアなどに渡ってイスラム過激派に参加した人物の監視や捜査、違法武器取引やテロ組織の資金源の取り締まりなどが活動の中心となる。
EUではテロ対策を含む治安維持は原則として各国の責任。ユーロポールに独自の捜査権限はなく、各国当局の活動を支援する情報交換の場となることが重要な役割だ。
しかし、これまで各国からの情報提供が不十分だとも指摘されてきた。EUによると、5千人を超えたとも推定される欧州からシリアなどに渡った過激派戦闘員に関し、昨年11月のパリ同時多発テロ前にユーロポールのシステムに情報が入力されていたのは約1600人。28加盟国中14カ国からは入力がなかった。
一方、情報を増やしても、当局が効果的に対応できなければ無意味だとも指摘される。欧州の対テロ政策に詳しいパリ政治学院のディディエ・ビゴ教授らは、シンクタンクのリポートでユーロポールを通じた合同捜査を増やし、情報提供を渋る傾向のある各国当局間の信頼関係を高めることの方が重要だと主張した。