埼玉県狭山市で顔にやけどを負った藤本羽月ちゃん(3)が死亡した事件では、関係機関の間で情報が共有されず、母親と同居の男による虐待が常態化していた様子が浮かぶ。市や県警、児童相談所などによる組織は、対応に不備がなかったか検証を進めている。
「子供が外に出されている」。藤本彩香容疑者(22)の次女、羽月ちゃんに関する110番が近所の男性からあったのは昨年6月。男性は同7月にも「子供が泣いている」と通報した。県警によると、いずれも狭山署員が訪問し、羽月ちゃんの服をめくってあざがないことなどを確認。児相へは通告しなかった。
羽月ちゃんは4カ月、1歳6カ月、3歳の乳幼児健診をいずれも受診していなかった。市によると、未受診者の家庭訪問として担当者が2回出向いたが、養育状況は問題なしと判断していた。
未受診や110番の情報は市、県警それぞれの中だけにとどまり、共有されることはなかった。
内閣府の「子ども・子育て会議」委員で認定NPO法人フローレンスの駒崎弘樹代表理事は「2回も110番があったのに児相に通告しなかったのはミス。助けられた命だった」と指摘する。
捜査関係者によると、1月9日に彩香容疑者宅で遺体が見つかった際、羽月ちゃんは薄い布団を掛けただけの状態で横たわっていた。遺体の状況から2日間程度は食事をしていなかったとみられる。
県警は1月11日、彩香容疑者と、同居の大河原優樹容疑者(24)を保護責任者遺棄容疑で逮捕。同29日、昨秋に羽月ちゃんを後ろ手に縛る暴行をした疑いで両容疑者を再逮捕した。
行政や警察、児相などで構成し、児童虐待対策にあたる市要保護児童対策地域協議会は同21日に緊急会議を開き、事件前の対応が適切だったか検証を進めると決めた。〔共同〕