【ワシントン=川合智之】ワシントンで3月31日から開いた第4回核安全保障サミットは1日、核物質の管理を「国家の根本的責任」と明記した共同声明を採択して閉幕する。テロリストによる核物質入手を阻止する取り組みを各国に求める。国際原子力機関(IAEA)が定期的に国際会議を開き、核テロ対策の情報を共有する。
具体策の一つが、核兵器の原料となるプルトニウムや高濃縮ウランの管理強化だ。これまでに15カ国・地域が高濃縮ウランなどを国外に搬出した。各国に核濃縮を放棄させるため、原発の燃料となるウランを国際的な枠組みで備蓄する「核燃料バンク」をカザフスタンで2017年にも稼働させる構想もある。
核安保サミットには50カ国以上の首脳らが参加した。「核なき世界」を呼びかけたオバマ米大統領が提唱して10年に開始。来年にオバマ氏が退任するため今回が最後となる。オバマ氏は「米国は核兵器を使用した唯一の国として、核廃絶の道義的義務を負う」と31日付の米紙ワシントン・ポストへの寄稿で表明し、サミット終了後も取り組みを続ける必要があると訴えた。
サミット後の道筋として、国連やIAEAなど5機関の行動計画を策定。今後の核安保強化に向けて5機関と各国が協力して計画を実施する。
09年にチェコの首都プラハでの演説で「核なき世界」を訴えてノーベル平和賞を受賞したオバマ氏にとって、核安保サミットやイラン核合意は重要な政権の遺産(レガシー)だ。ただオバマ氏の戦術核削減の提案にロシアのプーチン大統領は反対し、核軍縮は暗礁に乗り上げたまま。ウクライナやシリアでの軍事対立を背景に、プーチン氏は今回のサミットを欠席し、具体的な成果が乏しいとの指摘もある。