全国で唯一稼働している九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)について政府は16日、運転継続を容認する方針を示した。敷地内での揺れが、原子力規制委員会が認めた設定値を下回っているからだとしている。地震が相次ぐなか、規制委の判断に委ねる対応を続けている。
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原子力防災担当相を兼ねる丸川珠代環境相は16日の地震非常災害対策本部会議で、「規制委は川内原発を停止させる必要はないと判断している」と報告した。一連の地震で敷地内で計測された揺れは最大12・6ガル(ガルは揺れの勢いを示す加速度の単位)。規制委は新規制基準に基づく審査で、耐震設計のもとになる揺れの想定(基準地震動)を620ガルとした。菅義偉官房長官も会議後、「(揺れの大きさが)十分低いことから、現状において停止する必要はない」と強調した。
共産党は16日、「震源域が拡大している。新幹線や高速道も不通で、事故が起きた場合に避難に重大な支障が生まれる」として、予防的に川内原発を止めることを「真剣に検討し、国民・住民の不安にこたえるべきだ」と政府に申し入れた。
2011年の東日本大震災を受けて当時の菅直人首相が、中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)の運転停止を要請して止まったことがある。浜岡原発が南海トラフ地震の想定震源域にあるためだった。当時野党の自民党はこうした対応を「パフォーマンスだ」などと批判していた。安倍政権は、原発稼働の是非を政治判断で決めることを避け、規制委の審査に委ねている。
一方、揺れが続く別府―島原地溝帯の東には国内最長の中央構造線断層帯が連なり、近くには四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)もある。四電は今夏の再稼働を目指している。審査では、断層帯が480キロにわたって動く想定を規制委から求められた。四電は基準地震動を570ガルから650ガルに引き上げ、耐震対策などを強化した。