振動を加えた後のブローアウトパネル閉止装置を確認する原子力規制委員会の職員ら=兵庫県三木市
原子力規制委員会は21日、日本原子力発電東海第二原発(茨城県)の再稼働に向けた審査で、重要な判断材料としていた設備の性能試験を視察した。一部トラブルはあったが、技術的に大きな問題はないことを確認した。再稼働の条件となる新規制基準に適合することを認める審査書案を近くとりまとめる。
試験は、兵庫県にある防災科学技術研究所の実験施設で行われた。地震の揺れを再現できる専用の建物に、東海第二の原子炉建屋の壁に設置する「ブローアウトパネル閉止装置」と呼ばれる設備を持ち込み、想定される最大の揺れに見舞われた場合に、装置が適切に作動するか確かめた。
1分半ほど強く揺らし、パネル(縦横5メートル、重さ2トン)が閉じた状態を保てるか試した。揺れで部品の一部が破損し、パネルは約5センチ開いた。作業員が手動で閉じて気密性を確認した。原電は今後、確実に閉じた状態を保つよう設計を変えることになった。
視察した規制委の山中伸介委員は、対策は必要だが、基本的な設計には問題がないとの認識を示し、「きょうの試験で一つ大きな山を越えた」と述べた。
規制委は、運転40年を迎える11月までに安全対策などの工事計画に一定のめどが立ち、東京電力福島第一原発事故後に強化された新規制基準に「適合」する見通しになったとみている。
ただ、設備上の条件はそろっても、実際に再稼働するには、茨城県と東海村など6市村の同意が必要になる。19日には水戸市議会が再稼働に反対する意見書を可決するなど地元には慎重な意見が根強い。
資金繰りに苦しむ原電にとって、安全対策に必要な1740億円の工事費の確保も難題だ。東京電力ホールディングスなどが資金支援する意向を示しているが、工事費は今後増える可能性もあり、見通しは不透明だ。(小川裕介、川田俊男)