安藤忠雄さんが学生らと作った模型=5日午後、大阪市北区、橋本弦撮影
イタリアで5月28日、世界最大規模の建築展、ベネチア・ビエンナーレ国際建築展が始まる。世界的な建築家、安藤忠雄さん(74)は、出品する大型建築模型作りに学生の力を借りた。次代を担う若者に自信をつけさせたい――。そんな思いがあるためだ。
同展は国別参加部門と全体企画展がある。15回目となる今回、日本館の展示のほか、企画展に安藤さん、隈(くま)研吾さん、坂茂(ばんしげる)さん、妹島(せじま)和世さんら実力派が出品。賞の期待も高い。
大阪市北区の安藤さんの事務所でこのほど完成したのは、ベネチアにある17世紀の歴史的建造物の精巧な木製模型(長さ約5メートル)。建物は安藤さんが内部にコンクリートの箱を入れて再生し、2009年に美術館として開館した。
建築展には、設計中に作った模型や図面を出品することもあるが、歴史を重視した再生の過程を見せたいという安藤さんの意向で1月下旬から、新たな模型を作り始めた。タブレット端末をかざすと、工事の様子などの情報が得られる仕組みを検討中だ。「会場の大空間でも負けないような」大きさと精巧さが目標で、制作を主に担ったのは建築系の学生。関西を中心に北海道から九州までの大学から10人ほどが関わった。
設計図を元に、ノミやのこぎりを手に小さな建築を建てるような作業で、れんがの壁の質感は木片を積んで表現した。京都工芸繊維大大学院生、佐藤洋輔さん(24)は「大学では、これだけの大きさや質の模型は作らない。手作りの質感をぜひ見て欲しい」。九州大大学院生、小川博法さん(24)は「学年も大学も違う学生が、作業を通じてコミュニケーションが取れるようになった。自信作です」と話す。
安藤さんは「最初は不安だっただろうが、喜びは苦労がないと出てこない。彼らも自信ができたと思う」と語る。模型は21日ごろ、現地に向け出発する。(編集委員・大西若人)