亀裂に砂袋をつめて応急処置をした緑川の堤防道路=21日午前9時48分、熊本市南区富合町上杉、藤田太郎撮影
一連の熊本地震によって、熊本市や周辺を流れる主要な川の堤防で、クラック(亀裂)と地盤沈下が計100カ所以上できたことが国の調査で分かった。大雨が降れば決壊のおそれもあるとして、専門家は早急な対策を求めている。
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熊本地震 災害時の生活情報
熊本市は中心部を蛇行する白川や、市南部を流れ、多くの支流を持つ緑川の流域。いずれも1級河川で、国土交通省によると、両水系の氾濫(はんらん)では最大50万人が住む地域が被災するとされる。
同省熊本河川国道事務所が14日の前震と16日の本震の後で、白川の約17キロと緑川水系の約55キロを調べたところ、堤防が地盤沈下して波打ったり、堤防上の道路に最長で約300メートルのクラックができたりしていた。堤防を横切る形のひびも見つかった。地震による液状化などが原因とみられるという。
堤防が地盤沈下すると、従来の想定水位より低くても洪水が起こる可能性があるため、本来の基準より警戒の対応を強めている。
同事務所は前震の翌15日から、クラックにモルタルや土砂を入れる工事を行い、21日中の完了を目指す。今後、堤防を造り直すなどの復旧工事をする。「地震で明らかに堤防が弱くなっている。応急処置はほぼ終わったが何が起こるかわからない。緊迫感をもって対応している」と話す。
緑川水系を調べた東京電機大の安田進教授(地震・地盤工学)は「相当な被害が広範囲にある。梅雨や台風が来る6月までに復旧させなければ、昨年の鬼怒川のような被害につながる可能性がある」と指摘する。
21日の降雨を前に、地震の影響で白川の堤防の一部が壊れる恐れがあるとして、熊本市は20日、一部地域の住民に避難勧告を出した。(竹野内崇宏、中川壮)