ツアー初優勝を果たし、歓声に応える重永亜斗夢=時事
男子ゴルフの東建ホームメイトカップ(三重・東建多度CC名古屋 7081ヤード=パー71)は15日、最終ラウンド(R)があり、首位で出た熊本市出身の29歳、重永亜斗夢が、2バーディー、2ボギー、1ダブルボギー、通算12アンダーでツアー初勝利を挙げた。第3Rで首位から後退した石川遼は、3バーディー、2ボギー、通算11アンダーで2位だった。7位で出た金庚泰(韓)がスコアを三つ伸ばして3位。
ツアー初優勝が決まると、この日、熊本から急きょ駆けつけた妻と娘2人と抱き合い、喜びを分かち合った。熊本市出身。熊本地震から14日で2年がたち、「優勝して、少しでも熊本の人を元気づけられたらなと思う。(震災が)風化していく時期に勝てたのは、僕にとっていろんな意味で残る」。
故郷への思いが、弱音を吐きがちな「ネガティブ思考」を前向きに変えた。最終組で石川遼、片山晋呉と回る中、「自分のゴルフをすることに徹した」。前半は1番でバーディーを奪ったが、その後は2ボギー、1ダブルボギーと厳しい展開。2位の石川に1打差に迫られたが、「ミスしても腐らない」と心掛けた。後半は16番までパーが続く我慢のゴルフも、17番でバーディーを奪い、逃げ切った。石川の目には「攻めている」と映ったが、「セーフティー」を意識し、気持ちを強く持ち続けた結果だった。
熊本地震では熊本県菊陽町の自宅が被災。家族は車内で生活した。帰りたい気持ちがあったが、妻から「義援金を出せるくらい賞金稼いできてよ」と発破をかけられ、ツアーに専念した。2年前のこの大会は第3Rで2位につけ、やはり最終組で回ったが4位に終わった。やっとつかんだ栄光に、まだ実感はないという。「(優勝して)ネガティブ思考は変わるか」という報道陣からの質問には「変わりません」と即答したものの、「今日は優勝をかみしめたい」と屈託ない笑顔を見せた。(浅野有美)