死刑囚の告白に基づく捜索で神奈川県伊勢原市の山中から遺体が見つかった事件で、亡くなった津川静夫さん(当時60)が約20年前に失踪した直後、所有していた土地の所有権が、暴力団関係者とされる男性(故人)に移っていたことが、捜査関係者などへの取材で分かった。死刑囚は、この男性から津川さんの殺害を依頼された、と話しているという。
死刑囚告白で発見の遺体、96年から不明の男性
津川さんの殺害に関与したと告白しているのは、矢野治死刑囚(67)。矢野死刑囚らの供述を受け、警視庁は19日に伊勢原市の山中から遺体を見つけ、津川さんと確認した。
関係者や裁判資料などによると、東京都新宿区で不動産業をしていた津川さんは1982年、競売にかけられた小田急線伊勢原駅前の宅地約350平方メートルを約2300万円で競落。94年9月、暴力団関係者とされる男性から、再開発資金として2千万円前後の融資を受け、担保として土地の権利証と自分の印鑑証明書を男性に渡したという。
一方、津川さんは再開発のため、この土地に立っていたビルの所有者らに立ち退きを求める訴訟を起こしており、勝てば男性から総額2億円を借りる約束もしていた。しかし、勝訴した翌月の96年8月、津川さんは家族と連絡が取れない状態になった。不動産登記などによると、この土地の名義は同月、男性に移転。津川さんが渡した印鑑証明書の有効期限が切れる数日前だったという。
矢野死刑囚は警視庁に対し、この男性は暴力団幹部で、男性から津川さんの殺害を頼まれた、と説明しているという。