宮田利子さんが4泊し、エコノミークラス症候群になった軽乗用車の車内=熊本県御船町、茶井祐輝撮影
熊本地震の影響で今なお約3万人が避難を余儀なくされている。余震への恐れなどのために車中泊を続ける人たちにとっての脅威はエコノミークラス症候群(肺塞栓(そくせん)症など)。体調に異変を感じていなくても、意識を失ったりする。一度は心肺停止となりながら一命を取り留めた人の家族が体験を振り返った。
特集:熊本地震 ライフライン情報など
特集:あなたの街の揺れやすさを住所でチェック
熊本地震 災害時の生活情報
「気をつけていた彼女が、こんなことになるなんて」。熊本県御船町の宮田雅皓(まさひろ)さん(80)が、妻の利子さん(69)の体験を振り返った。
夫婦は御船町の一軒家で愛犬と暮らす。利子さんは以前から血圧が高めで薬を飲んでいたが、フラダンスにいそしむなど活動的な生活を送っていた。
熊本県が最大震度7の揺れに見舞われた14日夜。自宅は、ひびが入ったものの損壊を免れた。しかし、度重なる強い余震に恐怖を感じ、夫婦は庭に止めた軽乗用車で夜を明かすように。利子さんは日中に片付けなどをし、日が暮れると夫婦で軽乗用車の前部座席に並んで座り、眠った。
異変が起きたのは18日朝。16日未明の本震を経て4泊目の夜が明けたころだった。雅皓さんの携帯電話が鳴った。利子さんからだ。電話に出たが返事がない。家の中を捜し、1階トイレで見つけた利子さんは顔面蒼白(そうはく)。車から出てトイレに行った際に気分が悪くなったらしい。ヒューヒューとかすれた呼吸を繰り返す。「救急車……」。消え入りそうな声で言った。