「資本家閣下」と書かれたビラ
名古屋市で初めて開かれた1923(大正12)年のメーデーでまかれた宣伝ビラを、愛知県小牧市の元高校教諭、伊藤英一さん(80)が見つけた。愛知県知事名の報告書「メーデー示威運動挙行ノ件」に添付されていた。
報告書は法政大学の大原社会問題研究所(東京都町田市)に保存されていた。内務大臣や警視総監などにあててあり、当時の警察がまとめたとみられる。
報告によれば、23年5月1日、名古屋市昭和区の鶴舞公園に約250人が集まり、「労働者ノ意気ノ盛ナルコトヲ全市民ニ知ラシメサルヘカラス」(原文ママ)とのあいさつがあった後、那古野神社(中区)まで行進した。予想よりも参加者が少なかったとの記載もある。
回収された宣伝ビラは2種類。ドクロマークに「資本家閣下」と書かれたものが約100枚、「労働者諸君に激す」と題するものが約200枚まかれたという。伊藤さんは「当時の新聞にビラがまかれたことは記されていたが、詳細な内容が分かったのは初めて」と話している。(中村真理)