阿蘇大橋の捜索現場の様子を調べる消防や警察の関係者=1日午前8時3分、熊本県南阿蘇村、上田幸一撮影
熊本県などでの一連の地震をめぐり、同県は1日、南阿蘇村で続けてきた熊本学園大4年の大和晃(ひかる)さん(22)=同県阿蘇市=の陸上での捜索活動を中止することを決めた。蒲島(かばしま)郁夫知事は雨や余震により捜索現場で大規模崩落が起きる可能性があるとして、「二次災害の危険性が極めて高い」と説明した。
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熊本地震では、これまで関連死の疑いを含め66人が死亡しており、安否不明は阿蘇大橋(南阿蘇村)付近で土砂崩れに巻き込まれたとみられる大和さん1人になっていた。県は今後、ヘリコプターや河川監視カメラを使って捜索を続けるとしているが、陸上での捜索再開の見通しは立っていない。
大和さんは本震があった4月16日未明から安否が分からなくなっている。本震の直前、大和さんの車が阿蘇大橋方面に向かって走る様子を県警が確認し、県は土砂崩れに巻き込まれた可能性があると判断。16日から延べ2562人を投入したほか、二次災害を避けるために国土交通省の無人重機なども使って捜索を続けてきた。
蒲島氏は1日、「現在のような捜索はいったん終了することとした」と表明。「(安否確認を待つ)ご両親の心中を思うと、断腸の思い」とする一方、「重機による捜索が可能な範囲はすべて実施した」と理解を求めた。
県警などは1日午前、改めて捜索現場の状況を確認し、陸上での捜索中止の方針を大和さんの家族に伝えた。父卓也さん(58)は取材に対し、「打ち切りは早すぎる。捜索できる方法をもっと模索してほしい」と語った。
一方、県のとりまとめで1日、一連の地震による県内の農林水産関係の被害額が1022億円にのぼることが明らかになった。被災地は熊本市や益城町を含む上益城郡、阿蘇地域など広範で、自然災害による被害としては県にとって過去最大だとしている。
県は被害が大きかった18市町村で実施した家屋の応急危険度判定を4月30日で終了。調査した4万6966件のうち、1万3113件が「危険」、1万4907件が「要注意」と判定されたと発表した。今後必要になる応急仮設住宅が3千戸を超えると見積もっている。