三菱自動車の水島製作所(手前)。国内有数の工業地域「水島コンビナート」の一角を占める=岡山県倉敷市、朝日新聞社ヘリから、高橋一徳撮影
三菱自動車の燃費偽装で、下請け企業が苦境に立たされている。軽自動車の生産を止めている水島製作所(岡山県倉敷市)の周辺では、操業停止が下請けに波及し、派遣社員の仕事も失われつつある。三菱自と取引がある企業は全国に多数あり、影響の広がりが懸念される。
水島製作所では、6日も人影はまばらで、門の上に飾られた生産停止中の軽「eKスペース」が静かに雨に打たれていた。
そこから約10キロ離れた3次下請け部品工場。田畑に囲まれた自宅脇の倉庫に、納品するはずだった製品の箱が積み上がっていた。
「こんだけ作ったのはええが、誰か補償してくれるんじゃろうか」。70代の男性経営者はため息をつく。4月20日の偽装発覚翌日から受注も納品も止まった。
30年ほど前に会社を立ち上げ、自動車部品は三菱一本で仕事をしてきた。2次下請けが成型した軽自動車の内装やエンジン周りの部品に、スポンジ状の防音材を手作業で貼り付ける。利益は1個30円ほどで、1日千個前後を納めてきた。
従業員3人では手が足りず、近所の女性10人に内職を頼んでいた。「この辺りは、そんだけ三菱系の仕事のすそ野が広いんよ」。問題発覚後、内職を断ると、「一日でも早う仕事を持ってきて」と言われた。「いつまでも生産が再開されなんだら、どうなるんじゃ」と経営者の不安は募る。
三菱自の部品を数十年作ってきた倉敷市の3次下請けも生産を止めている。専務(58)によると、売り上げの9割が三菱自だった。問題発覚後、溶接した部品に油をふきかけ、空気が入らないようにポリ袋とラップのようなフィルムを巻いた。「とりあえずさびんようにしとるだけ。ほかのこと、できんしな」