秋川リサさん=山本和生撮影
俳優の秋川リサさん(63)はある日、介護していた認知症の母の日記の言葉を目にして、衝撃を受けました。「娘なんて産まなければよかった」。私はこんなにも母に憎まれていたのか――。
介護とわたしたち
「介護 あのとき、あの言葉」
同居していた母(88)が認知症と診断されたのは7年前のこと。最初は「財布がない」「通帳がない」と家捜しが始まった。症状が進むと、深夜に外出して、何度も警察に保護された。秋川さんはいつでも捜しに出られるよう、携帯電話や財布を枕元に置き、普段着のまま眠った。
2010年のある日。着替えやオムツの準備をするため、母の部屋のウォークインクローゼットに入った。段ボール箱が重なった奥にあるタンスの中に、数冊の大学ノートがあった。表紙には「昭和60~平成1」などと日付が書かれていた。家計簿かと思い、何げなく開いた。
「目に飛び込んできたのは、私やかつての私の夫への不平不満、罵詈雑言(ばりぞうごん)でした。『娘なんて産まなきゃよかった。一人で生きている方がよっぽどよかった』。私にとって初めて聞く言葉ではない。小さい頃から言われ続けてきた言葉でした」
米軍人だった秋川さんの父が日本を離れた後、母は苦労して秋川さんを育てた。モデルの仕事を始めてからは秋川さんが家計を支え、2人で海外も旅行した。母もうれしそうだった。多少は感謝の思いも持ってくれていると思っていたが、日記には「生活の面倒を見ているからって、偉そうに」と書かれていた。