2千人を超えるウォール街関係者が集まった超高級ホテル「ベラージオ」=ラスベガス、畑中徹撮影
米国の大統領選で共和党候補者指名が確実となった実業家トランプ氏(69)がウォール街(米金融街)に急接近している。選挙資金集めの責任者に金融界の大物を起用、本選を見据え、これまで批判したウォール街との関係強化をもくろむ。業界有力者の「トランプ支持」も広がりつつある。
特集:米大統領選2016
5月11~13日。2千人を超えるウォール街関係者がカジノの都、ラスベガスに集まった。昼間はシンポジウムが開かれ、夜には情報交換の場がもたれた。会場は、ジョージ・クルーニー主演の映画「オーシャンズ」シリーズで知られる高級ホテルのベラージオ。気温が30度を超え、Tシャツ短パン姿の観光客が目立つホテルで、「関係者以外立ち入り禁止」のエリアを、ダークスーツに身を包んだ集団が出入りする。その中に、ニューヨークから訪れた大物の姿があった。
スティーブン・ムニューチン氏。トランプ氏が5月上旬、「金庫番」の資金管理統括に指名した人物だ。親子2代で金融大手ゴールドマン・サックスの幹部を務め、いまはマンハッタンで投資会社を営む。ウォール街人脈をフル活用し、トランプ氏は10億ドル(約1100億円)以上の資金集めを求めているとされる。
ただウォール街の「トランプアレルギー」は強い。シンポジウムで、「この会場でトランプ氏に期待する人は?」と登壇者に問われて手を挙げたのはごく少数だった。低所得の白人らの不満を代弁し、金融業界の富裕層批判を繰り返したトランプ氏への支持は少ない。自由貿易を否定するなど経済活動を不安定にするのではとの懸念も根強い。
ムニューチン氏の使命ははっきりしている。11月の本選で勝つには、資金力が豊富な金融界からの支持が欠かせず、こじれた関係を修復することだ。これまでトランプ氏は自ら選挙資金をまかなってきたが、本選までは長丁場だけに、組織強化のために外部からの資金集めが急務といえる。