ブラジル・ルセフ大統領の職務停止に伴って5月12日に発足したばかりの暫定政権で30日、汚職撲滅を担当するシルベイラ監督相が辞任した。国営石油会社ペトロブラスと政界の汚職事件を巡り、捜査妨害とも取れる会話の録音がメディアに流出したためだ。24日にも、同様の問題で別の閣僚が辞任したばかり。汚職に対する国民の怒りを背に生まれた暫定政権は、早くも2閣僚が捜査妨害の疑いで辞任に追い込まれた。
録音は今年2月末のもので、29日に地元テレビ局グロボが放送した。司法制度を監督する審議会のメンバーだったシルベイラ氏が、汚職事件で名前が浮上したカリェイロス上院議長に対して、捜査からの身の守り方を助言。事件の担当検事に電話をかけ、捜査状況を聞き出そうとする様子も記録されていた。検察との司法取引に応じた企業幹部がひそかに録音していた。
シルベイラ氏は「捜査に介入する意図は全くなかった」とし、テメル大統領代行は30日、いったんシルベイラ氏の留任を決定したが、夜になってシルベイラ氏自身が辞任を申し出た。
今回の汚職事件では数十人の国会議員が捜査対象となっている。暫定政権ではジュカ企画予算相も捜査妨害と受け取れる会話の録音が報じられて辞任した。
ブラジルでは、深刻な不況が続く中、ペトロブラスの汚職事件が発覚。ルセフ大統領の支持率は低迷し、弾劾(だんがい)による職務停止に追い込まれた。暫定政権は複数の捜査対象者が閣僚に含まれており、事件のもみ消しを懸念する声が出ていた。(リマ=田村剛)