柔道の稽古をみる大阪府警の古根川実さん(中央)=5月23日、大阪市城東区、内田光撮影
8月開幕のリオデジャネイロ五輪で、大阪府警警部補の古根川実(こねがわみのる)さん(37)が男子柔道軽量級(60、66キロ級)の日本代表コーチを務める。現役時代は五輪や世界選手権とは無縁で、本人いわく「普通の柔道家」。元世界王者の井上康生・日本代表監督(38)からの電話が、人生を変えた。
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大阪市城東区にある府警の道場。「ヤア」とかけ声を上げながら、20人ほどの警察官が乱取り稽古をする。古根川さんは壁際に立ち、動きをじっと目で追いながら、時折、「試合を想定してやれよ」と低い声でアドバイスする。「レベルの高い選手からは、教える側が学ぶことも多いです」
年に3分の1は、全日本コーチとして国内外を飛び回りながら、大阪で柔道専門の警察官に稽古をつける多忙な日々だ。
「コネ、全日本のコーチをやってくれないか」。2012年11月。携帯電話に、井上さんから着信があった。かけ直すと、いきなりそう切り出された。井上さんは東海大の同級生。男子柔道が史上初めて、金メダルゼロと惨敗に終わった4年前のロンドン五輪の後だった。代表監督になった井上さんから直々に「日本柔道の立て直しに協力してほしい」と頼まれた。
予想外の出来事だった。「上司や家族に相談させて」と電話を切った。