事件の構図と中尾知佐被告への判決
福岡県筑後市のリサイクル店経営の夫婦が従業員ら3人への殺人や傷害致死の罪に問われた事件の裁判員裁判の判決が24日、福岡地裁であった。平塚浩司裁判長は「結果は重大で、犯情に酌むべき点はない」として、妻の中尾知佐(ちさ)被告(47)に懲役30年(求刑・無期懲役)を言い渡した。
知佐被告と夫伸也被告(49)が死亡に関与したとされるのは4人。このうち①2004年に衰弱死した従業員の日高崇さん(当時22)への殺人罪②06年に死亡した義弟の冷水(ひやみず)一也さん(当時34)とその息子大斗ちゃん(当時4)への傷害致死罪で起訴された。
判決は日高さん事件について、「両被告の暴力の中に死亡を企図しているとうかがえるような強度な暴力は見当たらない」として、「殺意があった」とする検察側の主張を退けた。
その上で「日高さんに対する暴行が繰り返された結果、死亡するに至った」として傷害致死罪が成立すると判断。冷水さん親子への暴行についても、両被告らに「包括的な共謀関係が成立していた」と認定した。
平塚裁判長は「両被告が被害者との間の支配服従関係に乗じて、意に沿わない被害者の言動に対し、暴行をとめどなく繰り返し、死亡するに至らせた」と指摘。「常習性は顕著で過程は陰惨というほかない」として、「法律上許された上限の刑をもって臨むのが相当」と量刑の理由を述べた。
知佐被告は公判で、殺人と傷害致死罪については「暴行したのは夫で、指示したことはない。殺すつもりもなかった」などと無罪を主張していた。
検察側は、一連の事件は知佐被告の指示や意向に沿ったものだとして、「類を見ない執拗(しつよう)かつ残忍な犯行。動機も、暴力で人を従わせようとする異常な支配欲に基づく」と指摘していた。
伸也被告の初公判は27日に同地裁である。(張守男)