戻ってきた肥前狛犬=佐賀警察署
素朴な彫りで表情が柔和な佐賀県独特の「肥前狛犬(こまいぬ)」。盗まれた1体が米ニューヨークから帰国した。狛犬を守り伝える地元団体がネットオークションに出品されているのに気づき、同県小城市の1体と特定。追跡のきっかけになった。
肥前狛犬は室町時代末期から江戸時代中期にかけてつくられ、神社などに置かれている。一般的な唐獅子形より小さく、愛らしい。
4月、佐賀県多久市の「肥前狛犬を学ぶ会」会員の永渕秀治さん(68)に、別の会員から「狛犬がネットオークションに出ている」と連絡があった。永渕さんは2013年ごろに調べた小城市内の狛犬と気づき、現地にないことを確認して佐賀県警小城署に相談した。別の窃盗容疑で県警佐賀署に逮捕された佐賀市の古美術店手伝いの男(74)が5月中旬、この狛犬を盗んだと自供した。
佐賀署が取引を追うと、米国に渡っていたことが判明。今月上旬からはニューヨークのギャラリーに展示され、1800ドル(約18万円)で売られていた。出展者は盗難品と知って返還に同意。今月下旬、狛犬は再び海を渡って帰国した。重さ15キロ、高さ40センチ、幅15センチ、奥行き30センチ。永渕さんは27日、佐賀署で狛犬と再会。「喜んでいるように見える。向こうでは英語は大丈夫だったのかな」と目を細めた。(黒田健朗)