オバマ米大統領は29日、訪問先のカナダで記者会見し、環太平洋経済連携協定(TPP)について「正しいことだ」と強調した。米大統領選では共和党のトランプ氏がTPP離脱を訴え、民主党のクリントン前国務長官も再交渉を明言しており、こうした議論に反論した形だ。
トランプ氏、大統領に就いたら「TPPから離脱」表明
オバマ氏は米国、カナダ、メキシコの3カ国による北米首脳会議に出席した。各国首脳との共同記者会見で、TPPをめぐる議論について「貿易をめぐる政治問題は、どの国でも常に難しい問題だ」と理解を示しつつ、「世界から遮断しようというのではなく、世界や労働者、環境基準の向上のために共に取り組むことだ。それがまさにTPPだ」と述べ、TPP促進の正当性を改めて強調した。
TPPは大統領選でも争点化。トランプ氏は「米国の製造業に致命的な打撃を与える。米国をTPPから離脱させる」と強調し、クリントン氏も「米国民のためにならない貿易協定は再交渉すべきだ」と再交渉に言及している。
オバマ氏はまた、トランプ氏を念頭に「選挙で勝つために物議をかもす。これはポピュリズム(大衆主義)ではなく、移民排斥主義か、皮肉屋だ」と批判。不法移民問題などでトランプ氏が批判するメキシコのペニャニエト大統領も、名指しは避けながら「扇動する政治家は世界が直面する問題解決で手っ取り早い手段を選びがちだが、問題はそんなに単純ではない」とたしなめた。(ワシントン=佐藤武嗣)