横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智選手=迫和義撮影
■横浜DeNAベイスターズ 筒香嘉智選手
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第98回全国高校野球選手権神奈川大会が開幕した。甲子園を目指して繰り広げられる球児たちの熱い戦い。横浜高校出身で、横浜DeNAベイスターズの主砲、筒香嘉智選手(24)に、高校時代の思い出や野球に対する思いを聞いた。
太陽が隠れ、雨模様となった空を切り裂くように、白球が右翼席へ放物線を描いた。
2008年夏、阪神甲子園球場。準々決勝の六回裏、横浜高の4番筒香嘉智選手が放った打球は、聖光学院(福島)を突き放す満塁本塁打となった。
この日は五回にも、右翼ポール際に2点本塁打。計8打点を挙げ、大会最多記録を作った。後に横浜DeNAベイスターズの主砲となり、日本代表の4番にも座る大器の片鱗(へんりん)を全国に示した。
「うれしかったですね。楽しく野球をやれていた。それが一番でした」。筒香選手はそう振り返る。
甲子園だからといって、気負いはなかった。「試合で怖がってプレーしたことは一度もない」。2年生のこの夏、5試合で19打数10安打、3本塁打、14打点という猛打を振るい、甲子園で4強という結果を残した。
和歌山県橋本市で育った筒香選手が横浜への進学を決めたのは、高校野球の歴史の中で今も語り継がれる「伝説の試合」を見たからだという。
1998年、第80回記念大会の準々決勝。横浜はPL学園(南大阪)を相手に、延長17回の死闘を繰り広げた。マウンドには、松坂大輔投手(現ソフトバンク)。250球を投げ抜く姿が筒香選手の目に焼き付いた。「まさにスーパースター。その活躍にすごく影響を受けました」
松坂投手は全国の頂点に立ったが、筒香選手は高校最後の夏、甲子園に出場することはかなわなかった。
神奈川大会準々決勝で、横浜隼人にサヨナラ負け。延長十回、筒香選手は三ゴロをさばききれず、失策。出塁を許した走者がサヨナラのホームを踏んだ。
それでも、悔しさはなかったという。「思い切ってプレーした結果だったので、後悔はないです」と振り返る。「3年間、先輩後輩と野球ができたことが一番の思い出。すべての試合が楽しかった」
高校卒業後、ドラフト1位で横浜ベイスターズ(現・横浜DeNAベイスターズ)に入団。高校時代は楽しく野球をすることだけを考えていたが、今は「変化を恐れないこと」を信条とする。「変化しないということは進化しない、成長しないということ」。わずかな変化で調子を崩してしまうことのあるプロの世界だが、「変化への恐れはない」と力強く話す。
高校球児にも恐れないで野球をしてほしいと願う。「せっかく好きで始めた野球。恐れを感じていたら、まったく楽しくない」。栄光も挫折も味わった高校野球。その経験から、「失敗を怖がらないで」とエールを送る。(飯塚直人)
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つつごう・よしとも 1991年11月生まれ。右投げ左打ち。185センチ、97キロ。和歌山県橋本市出身。
横浜高校に進学し、2年春、夏と甲子園に出場。2年夏は4強入りを果たした。
2009年に横浜ベイスターズ(現・横浜DeNAベイスターズ)がドラフト1位指名し、プロ7年目。昨季はリーグ4位の24本塁打を放った。日本代表でも4番を務めた。
高校では1年から4番を任され、高校通算69本塁打を記録した。「たまたまホームランバッターになれたので、常にホームランを狙っていました」と振り返る。