国士舘戦で先発した早稲田実のエース吉村優=ダイワハウス八王子、辻健治撮影
西東京大会で5回戦を勝った早稲田実の和泉実監督が言った。「吉村(優)が投手の柱になってくれそうだ。野手のみんなで守って育ててくれたらいい」
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吉村は大会前の練習試合で、自分でもなかなか納得のいく結果を出せていなかった。特に先発では。しかし、この5回戦は今大会で初めて先発の役目が回ってきて、工夫した。
試合前の投球練習を15球ほどで終わらせていた。「10球で肩はできる。リリーフのときと同じ気持ちでやるために初めてやった」。大胆策は結果に出た。一回、1死一塁を二ゴロ併殺に仕留め、調子をつかむ。フォーク、ツーシームを決め球に凡打を誘った。三振は三つだけだったが、四球はわずか一つ。7回を無失点に抑えた。
昨夏の全国選手権で4強入りしたエース松本皓もそうだった。直球は120キロ台だが、変化球でゴロを打たせるタイプ。西東京大会の3、4回戦は5回を投げていなかった。5回戦は7回6失点。準々決勝は5回2失点。しかし、準決勝の日大三戦で3安打に抑える完封勝利を挙げ、一皮むけた。甲子園では制球が良く、安定感のある投手になっていた。吉村もその姿に重なりつつある。
打っても投げても能力が高く、精神的にも強いエースがいたら理想的だ。だが、みんなに支えられて、粘り強く投げ続けるエースがいてもいい。技術的にも精神的にも未完成な球児は大会中の短い期間で、大きく成長できるのだから。(坂名信行)