受刑者に選挙権を認めない公職選挙法は違憲だとして、広島刑務所に服役中の50代の男性受刑者が選挙権があることの確認と、国家賠償120万円を求めた訴訟の判決が20日、広島地裁であった。末永雅之裁判長は訴えを退け、合憲の判断を示した。
同様の裁判では、大阪高裁が2013年に「一律に制限するやむを得ない理由があるとは言えない」と違憲の判断を示しており、司法判断が分かれた。
この日の判決は、選挙権の制限は立法府に一定の裁量が認められているとしたうえで「受刑者は一般社会から厳に隔離されるべき者で、遵法(じゅんぽう)精神の欠如も著しく、選挙権の行使の主体として適格性に疑問がある」と指摘。公選法の制限は正当性、合理性があるとした。
さらに制限が選挙人の資格の差別を禁じた憲法44条に違反するという主張に対し、受刑者の立場は一時的なもので「社会的身分」にはあたらないとした。
判決後、訴訟代理人の原田武彦弁護士らが会見し、制限の理由の有無から違憲とした大阪高裁判決に対し、広島地裁は制限に合理性があるか否かで判断したことを「後退」と評価。「選挙権のない受刑者は、公選法を変えようと思っても自分たちの力では変えられない。人権のとりでである裁判所はどこにいったのか」と訴えた。
原告の男性は07年から広島刑務所に収容されており、14年の衆院選で刑務所長に不在者投票を申し出たが認められず、大阪高裁判決を知り、15年9月に提訴していた。(久保田侑暉)