「想い出の日本一萬年」の写真。右から石橋蓮司さん、真山知子さん、蟹江敬三さん=早稲田大学演劇博物館提供
5月に死去した演出家・蜷川幸雄さんがアングラ演劇で活躍していた1970年、34歳で手がけた舞台の未公開映像が見つかった。初期の演出作は映像が残っておらず、貴重な資料だ。早稲田大学演劇博物館(東京都新宿区)で8月7日まで開かれている「あゝ新宿」展で、一部が公開されている。
発見されたのは、蜷川さんが68年に創設した「劇団現代人劇場」で上演した「想(おも)い出の日本一萬年」(清水邦夫作)の映像。創設メンバーの石橋蓮司さん、蜷川さんの妻で当時俳優の真山知子さん、故・蟹江敬三さんらが出演している。
物語は、死んだ若者の父親と兄たちが、その最期を知ろうと恋人を訪れるところから始まる。やがて彼らの会話を遮るように、次々と自身の「思い出」を語り出す群衆。70年安保闘争の時代を色濃く映す。
昨年、博物館に演劇関係者から寄贈されたオープンリールテープに、約1時間の映像が収められていた。傷みはあるが、卒塔婆(そとば)を積んだセットや熱っぽい演技が見てとれる。この4年後、蜷川さんは「ロミオとジュリエット」で、商業演劇の演出を初めて手がけた。