特殊詐欺の推移
今年上半期(1~6月)の特殊詐欺の被害額は198億4千万円で、前年同期比で41億8千万円(17・4%)減り、4年ぶりに200億円を下回った。警察が認知した事件(被害届が出たもの)は未遂を含め6443件で、同570件(8・1%)減。前年を下回るのは5年ぶり。警察庁が4日発表した。
警察庁は減少の要因に、犯人が被害者に現金を送らせるのに使う金融機関や宅配業者、コンビニの協力を挙げる。被害届が出ていない事件を含めると、被害者への声かけや通報で被害を未然に防げたのは6214件で、既遂件数(5990件)を初めて上回った。摘発した容疑者は1049人と2年続けて1千人を超え、摘発事件は前年同期より604件(35・1%)多い2327件だった。
警察が認知した事件のうち8割近い5070件で、65歳以上の高齢者が被害に遭っていた。手口別では、親族らになりすます「オレオレ詐欺」、株や債券の架空の取引話を持ちかける「金融商品詐欺」、医療費などの還付を装う「還付金詐欺」の3類型が4分の3を占めた。オレオレ詐欺と金融商品詐欺は前年より減った一方、還付金詐欺は419件(36・7%)増の1561件で、被害額は6億9千万円(58・1%)増えて18億9千万円だった。
還付金詐欺では、医療費や保険料の還付があると偽り、携帯電話を通じて言葉巧みに現金自動出入機(ATM)を操作させて現金を振り込ませる。金融機関ではなくスーパーや駐車場などに設置された人目につきにくい現金自動出入機(ATM)に行くよう指示されることが多いという。こうしたATMの増加によって被害が増えた可能性がある、と警察庁はみている。
今年5月に成立した刑事司法改革関連法により、年内に特殊詐欺事件でも通信傍受が可能となる。警察庁は、先行する薬物事件などの事例について調査し、どう取り組んでいくか検討しているという。(伊藤和也)