女子プロ野球の加藤優選手=9日午前、阪神甲子園球場、林紗記撮影
■甲子園観戦記
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小学2年以来の甲子園です。あのときは野球も見ずに遊んでましたけど、今日は完全に前のめり。何が起こるか分からないし、とにかくみんながカッコいい。
2年前にジャパン(日本代表)候補になったとき、「美しすぎる女子野球選手」って話題になっちゃって。私は野球一筋で泥臭くやってきたのに、プレー以外で注目されるのが嫌でした。いい結果を出して、そのことで注目されたかった。でも、もう切り替えました。ここから実力をつけて、野球で成功すればいいんです。
父が監督をしてた軟式のチームで、5歳から野球を始めました。そのあとリトルリーグとボーイズリーグで硬式をやって、高校ではソフトボール部。でも私はソフトよりダイナミックな野球が好き。1年の11月で退部して、硬式のクラブチームで野球に戻りました。
卒業後は介護の仕事をしながら野球に打ち込みました。リハビリのお手伝いをしてたんですけど、徐々にお年寄りとの信頼関係ができてくる。いまも私を応援してくれてます。あったかいんです。介護に携わった時間は宝物です。
第2試合のお客さんは3万5千人だって! 今年、女子プロ野球の埼玉アストライアに入った私は地元開幕戦に途中から出ました。観衆は2千人ちょっと。それでも鳥肌ものだったのに。
七回、山梨学院の先頭は9番広瀬君。うまいなあー。落ちる球を、ひざを柔らかく曲げて打ってセンター前ヒット。私と同じ左打ちだし、すごく参考になる。
小さいころに音楽教室に通ってて、高校のときにギターを始めました。趣味で続けてきたんですけど、去年の10月にCDデビューできました。そのうちの一曲が、高校時代に自分で作詞、作曲したバラード「きみのそら」。大事な先輩や同級生との別れは必ず来る。でも離ればなれになっても、絶対に空はつながってる。一緒だよ。そんな思いを込めました。甲子園の風景にすごく映える、この空もそう。つながってるんですよね。
最近、高校の女子硬式野球部がどんどん増えてます。毎年夏に選手権大会をやってるんですけど、女子も、決勝だけでも甲子園でやれる日が来ればいいな。
女子にもいい環境ができるように、私は女子プロ野球を盛り上げていきます。打率はいま2割9分8厘ですけど、3割打って、新人賞を狙いたい。トップ選手になってジャパンに入って、ワールドカップで世界一になりたい。いや、なります。甲子園に来て、燃えてきました。(構成・篠原大輔)
かとう・ゆう 女子プロ野球選手。1995年、神奈川県生まれ。厚木商高時代から硬式のクラブチームでプレーし、昨年プロの入団テストに合格。身長167センチ、右投げ左打ちの外野手で、遠投は79メートル。