優勝を決め、マウンドで跳び上がる作新学院の投手今井と駆け寄る捕手仲尾=内田光撮影
(21日、高校野球決勝 作新学院7―1北海)
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しなるように振り切った右腕から、外角低めへ直球が伸びる。5度目となる先発マウンドで、自己最速タイの152キロ。三回2死、4番打者を見逃し三振に仕留めた作新学院・今井は、大歓声を一身に浴びた。
「球数を抑えるため打たせてとることが大事」。そう話す今井はまた、球速が持つ力も知っている。
今大会初めて先行を許した。打線は走者を出しながら、相手投手を崩せない。「三つ目のアウトを速球で三振に打ちとれば味方も勢いづく」と今井。「思い切り来い」と構える鮎ケ瀬のミットをめがけ、この日一番の速球を放った。狙い通り、流れは変わる。直後、打線が5点を奪って逆転した。
中学までは「無名だった」。高校入学時の直球は130キロほど。同級生の速球派、入江と競うように走り込み、2年で144キロに。そしてこの夏、初めてベンチ入りした甲子園で150キロを突破した。「(球速への)期待は力になる」。要所でギアを上げ、球場のスピード表示が、何度となく試合の雰囲気を変えた。
奪った三振はこの日で44に。それでも「野手に頼りっきりだった」と言う。先行された二回のピンチでは遊撃手山本の好捕に救われた。四回には左翼手鈴木が飛び込みながら、打球をつかみとった。
「速球投手は三振に頼ってしまう。大事なのは、どれだけ野手を信じられるか」。履正社の寺島、横浜の藤平ら、好投手が目白押しだった今大会。歓喜のマウンドで両腕を突き上げたのは、大きな成長を遂げた今井達也だった。(鈴木健輔)
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○小針監督(作) 「OBの方々に絶対に優勝を見せたかった。選手がよく成長してくれて感動した。派手さはないが、気持ちで戦えるチームになった」