改修工事中のエレベーター。二重ブレーキ(上部に二つある部品)を備えた手前の機械を新たに取り付ける=29日、東京都板橋区の高島平団地
東京都で2006年に高校生が死亡したシンドラー社製エレベーター事故で、消費者安全調査委員会(事故調)は30日、調査報告書を公表した。全ての新設エレベーターに二重のブレーキ設置が義務づけられた09年以前に設置されたエレベーターでは、同様の事故が繰り返される危険性があるなどと指摘。国土交通省などに対策強化を求めた。
事故は06年6月、港区の公共住宅で起きた。12階でシンドラー社製エレベーターのブレーキが利かなくなって突然動きだし、市川大輔(ひろすけ)さん(当時16)がエレベーターの床と乗降口の上部の間に挟まれ亡くなった。
事故調は、ブレーキに異常摩耗が起き、保守管理業者が異常を見つけられず事故が起きたと指摘。メーカーが保守管理マニュアルを業者らに提供せず、業者の点検員が必要な資格を得ていなかったなどの問題点を挙げ、メーカーや保守管理業者、エレベーター所有者・管理者に適切な保守管理を促すよう国交省に求めた。事故調は12年10月に発足し、翌11月から調査してきた。
事故調の持丸正明委員長代理は「実効性のある対策がとられるかどうか今後も注視する。必要なら、さらに調査や指摘を続ける」。記者会見した大輔さんの母市川正子さん(64)は「報告書が出たことは、全てのエレベーターが安全になる第一歩にすぎない。行政や関係業者らは安全確保に真剣に取り組んで欲しい」と話した。