映画の撮影風景。韓国からの男子留学生が主人公の女子大生の家族と語り合う場面=千葉県鴨川市
文化も言葉も異なる日韓の大学生がこの夏、共同で映画作りに挑んだ。テーマは、房総半島でかつて暮らした、韓国・済州島出身の海女と家族の物語だ。
「はい、カット!」。千葉県鴨川市の古い民家で8月上旬、映画の撮影が進んでいた。張り詰めた空気の中、現場に日本語と韓国語が飛び交う。
映画を共同制作するのは城西国際大学と、留学生交換などで提携する韓国の東西大学の学生。城西国際大の姉妹校・城西大と東西大が昨年、ともに開学50周年を迎えたのを記念したプロジェクトだ。撮影は千葉と東京で9日間、行われた。
映画は、1920年に生まれ、30年代に韓国・済州島から出稼ぎで鴨川に来た海女と、その後の家族の100年近い物語を描く。「在日」としてのアイデンティティーの悩みを持つ主人公の女子大生が、韓国からの留学生の男性との出会いを通じ、歩む道を見つけていく――。脚本はフィクションだが、海女の出稼ぎは事実だ。
「学生たちにはまず、日韓の歴史を知ってもらうことから始めた」。プロデューサーを務める城西国際大メディア学部の掛尾良夫客員教授(66)はこう語る。雑誌「キネマ旬報」の元編集長で日韓の映画交流に深く関わってきた。
昨年10月に映画制作の希望者を募り、今春から授業として取り組むことに。約35人が参加し、日本の植民地支配や南北の分断、朝鮮戦争、徴兵制など、韓国とはどういう国かを映画や本で学んだ。海女の記憶をたどるため房総半島に調査にも訪れた。
監督の城西国際大4年中川冬馬…