10月から放映が始まる「灼熱の卓球娘」(C)朝野やぐら/集英社・灼熱の卓球娘製作委員会
卓球人気が、高まっている。8月のリオデジャネイロ五輪で日本は男女合わせ、三つのメダルを獲得。卓球教室の入会者は増え、酒と一緒に親しむ卓球バーも連日にぎわう。高齢者向けのデイサービスはその効用に注目し、今月からは卓球アニメの放映が始まる。
「ガコッガコッガコッ」
9月30日夕、大阪市北区の関西卓球アカデミー。女子団体で銅メダルを獲得した伊藤美誠(みま)選手(15)とコーチによる高速ラリーの音が響く。その光景を横目でにらみながら、女子選手らが真剣な表情で練習に取り組んでいた。
アカデミーはトップアスリートを育成する「卓球塾」。昇陽高校(同市此花区)に通う伊藤選手を始め、国内トップレベルの10代の女子選手が練習に励んでいる。2012年、ロンドン五輪とリオ五輪で監督として日本女子を率いた村上恭和(やすかず)さん(58)が中心となって設立。リオ五輪後に、入会や見学の問い合わせが増えている。
大内征夫・チーフコーチ(74)は「愛好者のすそ野が広がってほしい」との思いもあり、9月から初心者の個人指導を初めて引き受けた。「日本代表が金メダルをとってくれる日を夢見ている」と笑顔で語る。
■教室盛況、ラケット販売も好調
大阪府高石市の卓球教室「はごろも卓球スタジオ」。小学5年生の岡本慶太君(11)=堺市西区=は9月3日に入会したばかりだ。リオ五輪で卓球男子シングルス史上初の銅メダルを獲得した水谷隼(じゅん)選手(27)らの活躍をテレビで見て「習いたい」と母に頼みこんだ。「ラリーが楽しい。ルールを覚えていろんな技ができるようになりたい」と目を輝かせる。
コーチの新井愛さん(39)によると、リオ五輪後の1カ月間で新規入会者は約30人に達した。05年の開業以来、最多だ。大半が初心者で、小学1年生から70代と幅広い。「卓球の魅力が広がってきた実感がある」と新井さんは言う。
用具も売れている。
大阪市西区の本町卓球センターでは、8月下旬から1カ月間のラケットやラバーの売り上げが通常の約1・5倍に。大阪府藤井寺市のプロショップユゲ藤井寺店では、銅メダルを獲得した女子団体の選手たちが着ていたユニホームのモデルウェアの売り上げが五輪後の1カ月間、3割ほどアップした。子ども連れの保護者が、道具を買いそろえる姿が目立つという。
酒を飲みながら卓球が気軽に楽しめる大阪市西区の「Barラウンジ堀江卓球部」は、9月1日~15日の売り上げが前年比で2割増えた。1日に20人ほどだった来客数が、80人ほどにふくれる時もある。運営会社は「前回のロンドン五輪を超える客入り」と話す。
■高齢者の健康づくりにも
卓球を高齢者の健康向上につなげようと試みるのは大阪市北区の「やわらぎ卓球デイサービス」。定員10人で1回1時間ほど、原則65歳以上の高齢者に卓球を中心に運動指導をする。福田英夫代表(53)は「卓球は誰でも気軽にできる。やったことのない高齢の方も、健康づくりに活用してほしい」と話す。
卓球アニメも始まる。主人公の女子中学生が仲間と励まし合って卓球に打ち込む姿を描く「灼熱(しゃくねつ)の卓球娘」。担当者によると、リオ五輪を見据えて約2年前から企画していたという。
地上波は関東ローカルのみで、3日からテレビ東京で毎週月曜深夜1時35分~2時5分に放映。関東以外では「BSジャパン」(8日から毎週土曜深夜0時~)とCS放送「アニメシアターX」(4日から毎週火曜午後11時~)で視聴できる。(辻村周次郎)
■小遊三さん「時代が追いついてきた」
卓球好きで知られる落語家の三遊亭小遊三さんの話 リオ五輪の日本代表選手たち、みんなかっこよかった。水谷隼君の高速ラリーを見ていたら、「すげえな」「面白いな」って思うよね、そりゃ。中学から本格的に卓球を始めたけど、やっと世間が卓球の面白さに気づいてくれた気がする。卓球って本当に華やかなんだ。時代が追いついてきたのがうれしいね。卓球は誰にでも取っつきやすくてやりやすいスポーツで、子供から高齢者までみんなが楽しめる。4年後の東京五輪では中国を倒しての金メダル、期待したいね。