一つの企業で長く勤めたいと望む労働者が約6割にのぼることが、厚生労働省が30日発表した2016年版「労働経済の分析」(労働経済白書)でわかった。安倍政権は転職のしやすい社会への転換をめざしているが、働き手の多くは終身雇用を望んでいるようだ。
白書は、独立行政法人「労働政策研究・研修機構」が今年1~2月に労働者7777人を対象に実施した調査を紹介。それによると、「できるだけ一つの企業で長く勤めることが望ましい」「どちらかといえば望ましい」と考える人はあわせて60・7%で、「企業にとらわれず流動的に働けることが望ましい」「どちらかといえば望ましい」の計16・6%を上回った。
一方で、「一つの企業で一生働き続けることは可能だと思う」「どちらかといえばそう思う」人は計35・8%にとどまり、「倒産や解雇はいつ起こってもおかしくないと思う」「どちらかといえばそう思う」人も38・8%いた。希望と現実のギャップを感じている人が多いことがうかがえる。
「自分の能力や経験が転職の際にどの程度評価されるか」との問いに、「大いに評価される」「ある程度評価される」と答えた人は計42・7%いたが、「まったく評価されない」「あまり評価されない」と答えた人も計37・4%にのぼった。転職に自信が持てない人も少なくないようだ。(河合達郎)