GPS捜査をめぐる主な司法判断
裁判所の令状なしに、捜査対象者の車などにGPS(全地球測位システム)端末を取り付ける捜査手法が違法かについて、最高裁は5日、15人の裁判官全員による大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)で審理することを決めた。最高裁は重要な論点について判断する場合などに大法廷を開く。令状なしのGPS捜査をめぐっては各地で判断が分かれており、最高裁は何らかの判断を示すとみられる。
最高裁第二小法廷(鬼丸かおる裁判長)が5日、大法廷に回付したのは連続窃盗事件で起訴された男性被告(45)の上告審。被告は2012~13年、知人らと事務所への侵入などを繰り返したとして窃盗などの罪に問われた。大阪府警は13年5~12月、令状を取らずに被告らの車やバイクにGPS端末を装着。取得した位置情報をもとに犯行現場を特定するなどし、捜査報告書として証拠提出した。
被告は昨年7月の一審・大阪地裁判決で有罪となったが、地裁は証拠採用の際、位置情報にはプライバシーが含まれることなどから、GPS捜査は裁判所の令状が必要だと指摘。令状なくGPSを取り付けた府警の捜査は「プライバシー侵害で、重大な違法」として、この捜査報告書を証拠として採用しなかった。
二審・大阪高裁も今年3月に被告の控訴を棄却。高裁は、GPS捜査に令状が必要かどうか明確な判断を示さず、「プライバシー侵害の程度は必ずしも大きくなく、重大な違法があるとはいえない」とした。
令状なしのGPS捜査については各地の裁判で争われており、名古屋高裁が「違法」、広島高裁は「違法ではない」とするなど、判断が分かれている。
警察庁では、GPS捜査を裁判所の令状が要らない任意捜査と位置づけている。警察庁が06年に都道府県警に示した「運用要領」では、一定の重大な犯罪を対象に、尾行など他の方法による追跡が難しく、捜査上特に必要がある▽犯罪にあたるような行為を伴わずに設置する――などと要件を定める。都道府県警本部への報告義務も定めているが、警察庁は全国の実施件数を把握していないという。(千葉雄高、編集委員・吉田伸八)