ノルウェーのノーベル委員会は７日、２０１６年のノーベル平和賞を、半世紀に及ぶ左翼ゲリラ・コロンビア革命軍（ＦＡＲＣ）との内戦終結に向けて和平協議を主導し、合意にこぎ着けた南米コロンビアのフアン・マヌエル・サントス大統領（６５）に授与すると発表した。授賞式は１２月１０日にオスロである。

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９月の歴史的な和平合意は、平和賞の発表直前に行われた国民投票で、小差で否決された。授賞には、和平に向けた国民を挙げた努力を促す狙いがある。

発表会見で、同委員会のフィーベ委員長は「多大な困難にもくじけず、平和への希望をあきらめなかったコロンビア国民と交渉に貢献した全ての関係者に贈る。とりわけ数え切れない犠牲者の遺族に敬意を表する」と述べた。

発表直後に委員会事務局から電話で受賞を告げられたサントス氏は「とても光栄だ。受賞は私たちの国にとっても内戦の犠牲者にとっても非常に大事なことだ。和平に向けて努力を続ける」と喜んだ。

コロンビアでは６０年代から、ＦＡＲＣなどの左翼ゲリラや右派民兵組織を交えた内戦が続いてきた。戦闘やテロ、誘拐による死者は約２２万人、国内避難民は５００万人以上とされる。

サントス政権下で２０１２年に始まった１０年ぶりの交渉では、武器の引き渡しや農村開発、地雷の撤去などについて合意を重ねた。

昨年９月にはキューバの首都ハバナで、仲介役のラウル・カストロ国家評議会議長らが立ち会う中、ゲリラ兵士らの処罰方法などで合意。今年９月２６日には政府側とゲリラ側の最終合意文書の署名が行われた。

しかし和平合意への賛否を問う国民投票では、「罪を犯したゲリラを免責するものだ」などとウリベ前大統領らによる反対運動が展開され、５０・２％対４９・８％というわずかな差で否決された。

中南米からの平和賞受賞は１９９２年のグアテマラの人権活動家リゴベルタ・メンチュウ氏以来、２４年ぶり。コロンビアからのノーベル賞は「百年の孤独」を著した故ガルシア・マルケス氏が８２年に文学賞を受賞して以来、２人目となる。

今年の平和賞は、過去最多の計３７６候補（２２８人、１４８団体）の中から選ばれた。賞金は８００万スウェーデンクローナ（約９６００万円）。（オスロ＝渡辺志帆）

■政府とＦＡＲＣ、合意内容修正の可能性も

コロンビア政府とＦＡＲＣは７日、共同声明を出し、停戦の継続を表明した。また「迅速で効果的なプロセス」によって、合意反対派などの意見を聞くとし、合意内容の修正の可能性を示唆した。和平合意に盛り込まれた行方不明者の捜索や地雷の除去などを実行することで、信頼構築を進めていくともしている。

両者は、国民投票の結果を受けて、改めてキューバで接触していた。

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ノーベル委員会の授賞理由（要旨）は次の通り。

サントス大統領は半世紀以上続いた内戦の終結に尽力した。一方でこの賞は、平和への希望を捨てなかったコロンビア人と、和平交渉に貢献した全ての関係者もたたえるものである。

ＦＡＲＣとの和平合意に対する国民投票の結果は、反対票が賛成票をわずかに上回った。和平プロセスの中断と内戦の再燃が現実味を帯びる中、サントス大統領とＦＡＲＣ最高司令官が停戦を維持する重要性は増している。投票結果は必ずしも和平プロセスの頓挫を意味するものではない。ノーベル委員会は、和平プロセスを進めようと全関係者を対話の場へ招き入れようとしているサントス大統領の姿勢を評価する。

今後、国民的和解と被害者にとっての「正義の追求」の両立という困難な課題もある。この平和賞が、そうした課題に立ち向かう全ての関係者を勇気づけると期待する。

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〈フアン・マヌエル・サントス大統領〉 １９５１年、ボゴタ生まれ。大伯父が元大統領、いとこも副大統領を務めた政治家一家出身。国内最有力紙の副編集長などを経て政界へ。通商相や財務相、国防相を歴任。左翼ゲリラに強硬姿勢を採るウリベ政権で、人質奪還作戦や掃討作戦を指揮した。２０１０年の大統領選でウリベ氏の後継として初当選。就任後は和平交渉に乗り出し、４年の交渉を経て和平合意に導いた。