ミオスタチンの変異で筋肉量が増え可食部が多くなっているトラフグ(上)と同月齢の普通のトラフグ(下)=水産研究・教育機構、京都大提供
遺伝子の働きを効率良く操作できる「ゲノム編集」の技術を使い、筋肉を増やしたり、早く成長したりするトラフグが、国立研究開発法人水産研究・教育機構瀬戸内海区水産研究所(高松市)で育っている。京都大、近畿大などとの共同研究で育成。将来的には、高級魚トラフグの養殖期間を短縮し、安く流通させることができるのではと期待されている。
9月に奈良市で開かれた日本水産学会で、同研究所の吉浦康寿主任研究員(47)が成果を発表した。研究グループは文部科学省の科学研究費補助を受け、2014年からゲノム編集によるトラフグの品種改良に取り組んでいる。
研究ではゲノム編集により、①筋肉の成長を抑えている「ミオスタチン」という遺伝子を働かなくし、身の部分が1・4倍あるトラフグ②食欲を抑える遺伝子を働かなくし通常より餌をよく食べ早く成長するトラフグ――を誕生させた。
魚の品種改良では、自然界の突然変異で生まれる、体が大きいなどの特徴を持つ個体を選び育てるのがこれまでの主流だった。だが、変異が起こるのは100万~1千万匹に1匹の確率ともいわれ、運任せの面が強かった。その点、狙った遺伝子に直接働きかけるゲノム編集は「格段に効率が良い品種改良方法」(吉浦主任研究員)という。
他の生物の遺伝子を導入する遺…