道路沿いに立つ人形仕立ての「茅ボッチ」=栃木県日光市
栃木県日光市土呂部(どろぶ)の採草地に、刈り取ったススキなどを高さ1メートルほどの円錐(すい)形に束ねて立てかける「茅(かや)ボッチ」が並んでいる。この地の秋の風物詩だ。「目玉」を付けた愛くるしい表情のものもお目見えし、道行く人の目を楽しませている。
昔ながらの里山の風景を再生しようと、2013年秋に住民らが「日光茅ボッチの会」(飯村孝文代表)を結成。地元のお年寄りから手ほどきを受けて取り組んでいる。干した草は牛舎の敷きわらなどに使う。
土呂部の採草地は全国でも珍しく、ほぼ自然のまま。ただ1950年代には約24ヘクタールあったが、過疎や高齢化で森林化が進んで約6ヘクタールに激減した。希少な植物も姿を消した。会では採草して茅ボッチを作っているほか、シカの食害から守る電気柵を設け、低木を伐採するなどしてきた。飯村代表は「ニッコウキスゲが黄色い花をつけるなど活動の成果が出始めている。再生が静かに進んでいる」と話す。
8、9両日は、市や奥鬼怒・川俣温泉旅館組合などが企画するツアー客らが茅ボッチづくりに挑戦。道路沿い約1キロに、目玉をつけた人形仕立ての茅ボッチを並べる。(梶山天〈たかし〉)