大津市の小中学校では、いじめにつながる端緒があった時点で、所定のフォームで市教委に報告する
2011年10月11日、いじめを受けていた大津市立中学2年の男子生徒(当時13)が自ら命を絶った。いじめの情報を共有せず、適切な対応をとらなかったとされる学校現場。悲劇を繰り返すまいと、5年の今も、再発防止への取り組みが市内の小中学校で続く。
今春、大津市教育委員会が小中学校の全教員に配ったパンフレット。「私たちの重い責任」として次のような文言が記されている。
《いじめの認識を持てないこと自体が過失》《いじめがあれば最悪の事態につながると予見すべきだ》
いじめ問題を巡る裁判で昨年3月、自殺した生徒の遺族と市が和解した。文言は和解文書の判断内容を一般化し、どんな情報でも速やかな共有を徹底、保護者にもしっかり伝えようと呼びかけるものだ。
市は13年度から、専従の「いじめ対策担当教員」を小中全55校に1人ずつ配置。毎年度約2億円の予算をつけて講師を雇い、不足する人材を補う全国的にも数少ない制度だ。その後、大規模校6校には2人を配置している。生徒指導の経験を積んだベテランが選ばれることが多く、担任の負担を和らげ、地域との連携などを通じた円滑な情報集約につながっているという。
集まった情報は、教員やスクールカウンセラーらでつくる各校の「いじめ対策委員会」で報告される。市の場合、教員1人が抱え込むのを防ぐために「毎週開催」が原則。このほか事案が起きればその都度開かれることになっており、昨年度は1校平均で79回開催された。
さらに「いじめの疑い」事案があれば、24時間以内に学校から市教委へメールで速報。所定のフォームに事実関係や対処方針を書いて送り、市教委に4人いる指導主事が交代でチェックし、組織対応をはかる。
昨年度のいじめ認知件数は過去最多の681件。市教委は「小さないじめでも見つける対策が進んだ証し」とみる。